鋳造 手作り焼印職人
お饅頭やどら焼きなど、和菓子屋さんの個性を出すのに欠かせない焼印。昔ながらの手法で作る鋳物の焼印職人さんも数少なくなり途絶えてしまいそうな伝統工芸の一つです。
鋳物焼印が完成するまでには細かい作業も含めるとおよそ100工程と長い道のり。しかも、その作業は暑さとの戦いです。
今回は、鋳物焼印を作って下さる職人さんの元を尋ねました。
鋳物焼印の型、砂型
現在オーダーメイドの焼印のほとんどは機械彫りで作られるものがほとんどで、型に鉄を流して固め作る鋳物の焼印は少なくなりました。
鋳物で作る場合、砂型と呼ばれる流し込むための型を手作業で彫り上げていきます。
砂型は自然にある砂浜の砂や海藻から作られる専用の糊状のものを混ぜ合わせ四角いレンガ状の塊を作ります。
この塊にカーボン紙でデザインを転写します。
また、この表型は湿気に対して弱く夏場でもヒーターが欠かせないとても大変な作業となります。
彫る道具は意外なもの・・・
この砂の表型を彫る道具ってどんなものだと思いますか?砂型はもろく木型のように固くないため彫刻刀は使いません。
砂型を彫る道具は、「畳屋さんの針」や「自転車のスポーク」を使うそうです。転写したデザインに直接「ガリガリ」と削るように彫っていきます。
こうしてできあがった表型と裏型を合わせて流し込み用の型が完成します。
流し込み作業は暑さとの戦い
焼印の材料は銑鉄と呼ばれる鉄を使用します。この銑鉄を高温で溶かし液体となった鉄を型に流し込んで冷やし固めます。
そのため、鉄の流し込み作業は夏場は熱中症との戦い、冬場でも汗が滴るほどの厚さの中での過酷な作業となります。
鉄を流し込むために、砂の中に組んだ型を埋めて固定します。
そしていよいよ鉄の溶かし作業です。ここからが鋳物ならではの過酷な作業です。とても思い金属の液体は扱いが難しく力仕事になります。
溶かした銑鉄を型に流しこんでいきます。
この流し込み作業は一発勝負。流し込みがうまくいかないと型の隅まで鉄が入り込まず使い物にならなくなってしまいます。
しかも、お菓子型などの製型用金型とは異なり、砂型は成功しても失敗しても一回きりしか使えません。型を流し込んだ後に焼印を取り出すときに砂型を壊してしまうからです。
いかがでしたでしょうか?過酷な環境の中で、型作りから手作業で作られる鋳物焼印。作られる砂型は再利用ができず、既製品であっても作り直しが必要となる手間のかかる作業となります。
そのため、こちらの焼印工場では特注品を作ることができず、1か月を掛けて砂型作りから鋳造までを行っております。
この工場でもその過酷さから、やはり後を継いでくださる方がいらっしゃらないそうです。機械彫りでは出せない趣のある手作り焼印。
この技術も後世へ伝えたいものづくりの一つです。